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コラム

転職で年収はどれくらい変わるのか|職種別リアルな増減額まとめ

結論

年収は「どの職種に転職するか」以上に、その職種の年収変動幅(安定型か青天井型か)と、自分の経験をどう翻訳してスタート地点に立てるかで決まります。「異業種なら年収が上がる」という単純な期待だけで転職先を選ぶと、実態とのギャップが生まれやすい点に注意が必要です。

「異業種に転職したら、年収は上がるのか、下がるのか」。これは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士から転職を考えるとき、ほぼ全員が最初にぶつかる疑問です。

「PTの給料は低い」という話は、リハビリ職の間ではもはや共通認識のように語られています。だから「異業種に行けば年収が上がるはず」と考えるのは自然な発想です。でも、実際にデータを並べてみると、この前提そのものが単純化しすぎていることがわかります。この記事では、これまで書いてきた経理・営業・不動産・事務・公務員それぞれの年収データを横断的に整理しながら、「年収は転職先で決まるのではなく、何によって決まるのか」を掘り下げていきます。

転職相談を受けていると、「不動産営業は稼げるらしい」「経理は年収が上がるって聞いた」という、ネットやSNSで見かけた断片的な情報だけを頼りに転職先を決めかけている人によく出会います。もちろんそれらの情報は間違ってはいません。ただ、平均値というのは、その裏にある「なぜその金額になるのか」という構造を見ないと、正しく使いこなせない数字です。この記事を読み終える頃には、「年収が高い・低い」という表面的な比較ではなく、自分にとって本当に意味のある比較軸を持てるようになっているはずです。

まず、リハビリ職の年収を正しく知る

厚生労働省の統計を見ると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の平均年収はおよそ440万円〜450万円台です。「令和6年賃金構造基本統計調査」ベースで、月収30万円台・ボーナス70万円台という内訳になっています。

この数字、実は世間で言われているほど極端に低いわけではありません。日本のビジネスパーソン全体の平均年収が429万円前後という調査結果もあるので、PTの平均年収はむしろ全体平均と近い水準にあります。

問題は「平均」ではなく「伸びしろ」にあります。PTの給料は、診療報酬制度という国が決めた枠組みの中で決まるため、経験を重ねても昇給の幅が小さく、役職に就ける人数も限られています。つまり、「今の年収が低いわけではないが、この先も大きくは伸びない」という構造的な天井が、多くのPT/OT/STが感じている閉塞感の正体です。

職種別・年収比較

ここから、これまで書いてきた各職種の年収データを横並びで整理します。

転職先 平均年収の目安 特徴・変動要因
経理 約480万〜570万円 業界・企業規模で大きく差(メーカー480万〜600万円、金融600万〜850万円など)。資格(簿記等)と実務経験の蓄積で着実に上がる
営業(全体) 約470万〜480万円 インセンティブ次第で上振れしやすい。業界による差も大きい(MRは800万円超の例も)
不動産営業 約450万〜480万円(全体平均) 歩合の比重が大きく個人差が非常に大きい。1年目300万〜400万円、5年目には700万〜1,000万円という推移も珍しくない
一般事務 約350万〜360万円 平均は低めだが、未経験からの間口が広く安定性が高い
公務員(医療職) 給料表に基づき経験年数で号俸が決まる 年功序列で着実に上がるが、突出した高収入にはなりにくい。退職金・福利厚生が手厚い

こうして並べると、「異業種に行けば必ず年収が上がる」という単純な話ではないことが見えてきます。一般事務のように、平均年収だけを見るとPTより低い転職先すらあります。それでも一般事務への転職を選ぶ人がいるのは、年収以外の理由(働き方・通勤・ライフスタイルとの相性)が優先されるケースがあるからです。

それぞれの職種を、もう少し詳しく見ていきます。

経理:資格と実務経験が積み上がる「階段型」

経理は、業界による年収差が非常に大きい職種です。メーカー(製造業)なら480万〜600万円、金融(銀行・証券・保険)なら600万〜850万円というように、同じ「経理」という肩書きでも、勤め先の業界でレンジ自体が変わります。

さらに、年代別に見ても20代後半で想定年収456万円、30代後半で584万円というデータもあり、経験と資格(簿記・税務知識など)を積み重ねるほど、着実に年収が伸びていく「階段型」の職種だと言えます。PTから経理に転職する場合、最初は未経験枠からのスタートになることが多いですが、その後の伸びしろは臨床職より大きい可能性があります。

営業(不動産含む):インセンティブが左右する「青天井型」

営業職全体の平均年収は470万円台ですが、これはあくまで平均です。実態は業界によって大きく異なり、営業系の年収ランキングでは医薬品営業(MR)が800万円超で1位になるなど、業界選びそのものが年収に直結します。

不動産営業はさらに極端です。全体の平均年収は450万〜480万円程度とされていますが、これは基本給に加えてインセンティブ(歩合)の比重が大きいことが影響しています。ある調査では、1年目は300万〜400万円、3年目で500万〜700万円、5年目には700万〜1,000万円という推移が紹介されており、同じ「不動産営業」という肩書きでも、成果次第で年収が2倍以上に開くことも珍しくありません。

一般事務:安定はしているが、年収の天井は低め

一般事務の平均年収は356万円前後、事務職全体で見ても353万円というデータがあり、他の職種と比べると年収水準は控えめです。ただしその分、未経験からの間口が広く、残業が少ない・突発的な業務変動が起きにくいなど、働き方の安定性を重視する人には合っている選択肢です。「年収を上げる」ことよりも「今の働き方の負担を減らす」ことを優先したい人が選ぶことが多い職種だと言えます。

公務員(医療職):年功序列で着実に、しかし緩やかに

公立病院でPT/OT/STとして働く場合や、行政の医療職として採用される場合、給与は医療職給料表・医療職俸給表(二)に基づいて決まります。ここでの特徴は、勤続年数に応じて号俸が上がっていく年功序列の仕組みです。

初任給の決め方も独特で、最終学歴・所有資格・就職時の年齢・同職種の実務経験・修学期間のうち、もっとも有利な条件を基準に号俸が決まります。つまり、臨床経験がそのまま初任給に反映される仕組みなので、新卒でいきなり公務員になるより、数年の実務経験を経てから転職したほうが有利になりやすい、という特徴があります。年収の伸びは緩やかですが、退職金や福利厚生の手厚さを含めたトータルの安定感は、他の職種にはない強みです。

新たな発見:年収を決めているのは「転職先」ではなく「変動幅」

ここが、データを並べてみて一番はっきり見えてきたポイントです。年収を大きく左右しているのは、実は「どの職種に転職するか」以上に、「その職種の年収の変動幅がどれくらい大きいか」です。

経理・一般事務・公務員は、年収の変動幅が比較的小さい「安定型」の職種です。平均値からそう大きく外れることはなく、経験年数に応じて着実に、しかし緩やかに上がっていきます。

一方、不動産営業や一部の営業職は、変動幅が非常に大きい「青天井型」です。同じ「不動産営業」という肩書きでも、1年目は300万円台、5年目には700万〜1,000万円という人もいれば、成果が出ずに横ばいのままの人もいます。平均年収という1つの数字の裏には、実際にはかなり幅広い分布が隠れているのです。

つまり、「年収を上げたいから異業種に行く」という発想だけでは不十分で、「自分は安定型と青天井型、どちらの変動幅に身を置きたいか」という軸で選ぶ方が、実態に即した判断になります。PTの給料が伸びにくいのは診療報酬という制度上の天井があるからでしたが、これは裏を返せば「変動幅が極端に小さい、究極の安定型」だったとも言えます。そこから飛び出す先を、同じように安定型で選ぶのか、思い切って青天井型で選ぶのかは、性格やライフステージによって答えが変わってくるはずです。

もう1つの発見:「経験の翻訳」が変動幅の中でどこに立てるかを決める

もう1つ重要なのは、同じ職種の中でも、どのポジションからスタートできるかによって年収が大きく変わるという点です。

例えば経理であれば、簿記などの資格や実務経験の伝え方次第で、未経験枠のスタート年収と、経験者枠に近いスタート年収の間には数十万円単位の差が生まれます。公務員であれば、初任給の号俸算定に「同職種の経験年数」がそのまま加味される仕組みがあるため、臨床経験の年数がそのまま初任給に反映されます。

つまり、「PTとしての経験をどう言語化して伝えるか」が、転職先の年収レンジの中でどの位置からスタートできるかを左右しています。これは、以前の記事(職務経歴書の書き方)で触れた「経験の翻訳」の話と、実はそのままつながっています。同じ5年の臨床経験でも、それをただの経歴として書くか、汎用スキルとして翻訳して伝えるかで、スタート地点の年収そのものが変わってくるのです。

見落とされがちな視点:単年の年収より「生涯の伸び方」で考える

もう1つ、比較の際に見落とされがちな視点があります。それは、「今年の年収」ではなく「この先10年、20年でどう伸びていくか」という生涯年収の視点です。

例えば、不動産営業は初年度の年収こそ低めですが、5年目には700万〜1,000万円に達する人も珍しくありません。一方、公務員や一般事務は初年度からの伸びは緩やかですが、大きく崩れることもなく、退職金まで含めた着地点は意外と安定しています。経理は、資格と実務経験の掛け算で、業界を選べば10年単位で見たときの伸び幅が大きくなる可能性があります。

「今の年収が今より上がるか」だけで比較すると、変動幅の大きい職種ほど魅力的に見えます。でも、その変動幅の裏には「稼げない人もいる」というリスクも同居しています。生涯年収という長いスパンで考えたとき、自分がどの職種の「伸び方のカーブ」に賭けたいのかを考えることが、単年の平均値の比較よりもずっと本質的な判断材料になります。

よくある質問

Q. 一番年収が上がりやすい転職先はどれですか?

A. 一概には言えません。平均値だけで見れば経理や営業系が高めですが、不動産営業のように成果次第で青天井になる職種もあれば、公務員のように緩やかでも安定して積み上がる職種もあります。「上がりやすさ」ではなく「自分がどの変動幅に向いているか」で選ぶことをおすすめします。

Q. 年収が下がる転職は避けるべきですか?

A. 一時的に年収が下がる転職を、一概に避けるべきとは言えません。特に完全未経験からの転職では、最初の1〜2年は下がることも十分にあり得ます。ただしその後の伸び方(階段型か、天井が低いか)を見極めた上で、数年単位で判断することが大切です。

Q. PTとしての経験は、転職先の年収にどう影響しますか?

A. 経験そのものより、「その経験をどう言語化して伝えるか」が影響します。同じ臨床経験でも、汎用スキルとして翻訳して伝えられるかどうかで、転職先でのスタート年収が変わってくる可能性があります。

2つのケースで考えてみる

抽象的な話だけだとイメージしづらいと思うので、2つの架空のケースで考えてみます。

ケースA:安定志向で、家庭との両立を優先したいPT

このタイプの人には、経理や公務員(医療職)への転職が合っている可能性が高いです。どちらも年功序列型で、急な変動が起きにくく、生活設計が立てやすいのが特徴です。特に経理は、簿記資格を取得しながら転職活動を進めることで、未経験枠でも一定の評価を得やすくなります。

ケースB:多少のリスクを取ってでも、収入の天井を上げたいPT

このタイプの人には、不動産営業のような歩合の比重が大きい職種が選択肢に入ってきます。ただしその場合、1年目の年収が一時的に下がる可能性を織り込んでおく必要があります。「初年度は修行期間」と割り切れるかどうかが、この選択がうまくいくかどうかの分かれ目になります。

どちらが正解ということはありません。大切なのは、自分がどちらのタイプに近いかを、転職活動を始める前に自覚しておくことです。年収の数字だけを見て、自分のタイプと合わない職種を選んでしまうと、「思っていたのと違う」というミスマッチにつながりやすくなります。

手取りベースで考えることも忘れずに

もう1つ、実務的な注意点として、年収の比較は「額面」であることがほとんどです。実際の生活に関わるのは、そこから税金・社会保険料が引かれた「手取り」の金額です。

同じ額面年収でも、賞与の比率が高い職種(不動産営業のようにインセンティブ比率が高い場合)と、月給に均等に配分される職種(公務員のように月給中心の場合)とでは、手取りの見え方や毎月の資金繰りの感覚が変わってきます。額面の数字だけで比較・判断せず、「毎月いくら手元に残るか」というイメージも合わせて持っておくと、転職後のギャップを減らせます。

自分がどちらのタイプに近いか、考えてみる

ここまで読んで、「自分は安定型に向いているのか、青天井型に向いているのか」がまだピンとこない人もいると思います。参考までに、判断のヒントになる問いをいくつか挙げてみます。

これらの問いに対する答えが、「安定していないと落ち着かない」寄りであれば経理・公務員・一般事務のような安定型、「多少のブレは受け入れられる、むしろ伸びしろに賭けたい」寄りであれば不動産営業のような青天井型が、性格的にも合っている可能性が高いです。

結論:「年収が上がる転職先」ではなく「自分に合う変動幅」を選ぶ

ここまでの整理をまとめると、転職先を年収だけで選ぶときに大切なのは、次の2つの視点です。

  1. その職種の年収の変動幅は、安定型か青天井型か:自分がリスクを取ってでも上を目指したいのか、着実さを優先したいのかを先に決める
  2. 自分の経験を、その職種のどのポジションからスタートできる形で伝えられるか:平均年収の数字そのものより、自分がその中のどこに立てるかの方が重要

「PTから経理に転職すれば年収が上がる」「不動産営業なら稼げる」といった単純な情報だけで転職先を決めてしまうと、実際に働き始めてから「思っていたのと違う」というギャップが生まれやすくなります。大切なのは、平均年収の数字ではなく、その数字の裏にある変動幅の性質を理解した上で、自分の経験をどう翻訳してその中の良いポジションに立てるかを考えることです。

次にやるべきこと

まずは、気になる職種の年収レンジと変動要因を、実際の転職者の声も含めて詳しく知ることから始めてみてください。このサイトでは、経理・営業・不動産営業・公務員・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員など、それぞれの職種について、実体験ベースの詳しい記事を用意しています。

平均年収の数字だけを見て一喜一憂するのではなく、「自分はどちらの変動幅に向いているか」「自分の経験をどう翻訳すれば良いスタート地点に立てるか」という2つの問いを持ちながら、それぞれの記事を読んでみることをおすすめします。その視点があるだけで、同じ情報でも見え方がまったく変わってくるはずです。

一人で悩まず、まずは話を聞いてみるのも一つの方法です。→ エージェントを探す

自分に合う職種がまだ分からない方は、約2分のタイプ診断で方向性を整理できます。

この記事を書いた人

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