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コラム

新卒とほぼ同じ給料だった話の、その後|PT/OT/STが昇給を待たずに自分でできること

結論

給料が頭打ちだと感じたときの根本的な解決策は転職ですが、そのタイミングを待つ間にも自分でできることはあります。先取り貯蓄の仕組み化、少額からの積立投資、資格を市場価値として捉え直すこと、支出の見直し、副業の可能性の確認。この5つは今日からでも始められます。

以前、新卒の初任給と5年働いた自分の給料がほぼ同じだった、という話を書いた。あの記事を読んで、「うちも同じです」という反応をたくさんもらった。

リハビリ職の給料は、頑張っても頑張らなくても昇給のペースがほぼ決まっている。転職して環境を変えるのが一番効果的な打ち手ではあるが、今すぐ転職できない事情がある人も多いはずだ。家庭の都合、資格取得までの期間、今の職場に不満がないわけではないタイミングなど、理由はさまざまだろう。

この記事では、転職以外に「給料が上がらない」という状況に対して、今すぐ始められる自衛策を紹介する。特別な知識がなくても始められる、基本的な考え方に絞って解説する。

まず知っておきたい、なぜ「貯金だけ」では厳しいのか

真面目に働いて、余ったお金をコツコツ貯金する。これ自体は悪いことではない。しかし、物価が上がり続ける状況では、現金のまま置いておくお金の実質的な価値は少しずつ目減りしていく。

給料が上がらないのに、生活費は上がっていく。この状況で貯金だけに頼っていると、じわじわと生活が苦しくなっていく感覚を持つ人は少なくない。だからこそ、「収入を増やす」以外にも、「今ある資産を目減りさせない」という発想を持っておく必要がある。

ただし、この記事で紹介する自衛策は、すべてを一度にやる必要はない。まずは生活防衛資金として、当面の生活費数か月分を現金や預貯金で確保しておくことが大前提になる。急な出費や収入減があっても生活が崩れない土台を作ったうえで、余裕のある範囲で次のステップに進むという順番を意識してほしい。この生活防衛資金があるかどうかで、後述する積立投資や資格取得への取り組みやすさも大きく変わってくる。

自衛策1:先取り貯蓄の仕組みを作る

給料が入ったら先に一定額を別口座に移し、残ったお金で生活する。これだけのことだが、意外とできていない人が多い。

給料日に自動で積立設定をしておけば、意思の力に頼らずに続けられる。まずは手取りの1割程度からで十分だ。この仕組みがあるかないかで、数年後の資産状況は大きく変わってくる。

やり方としては、給与振込口座とは別に貯蓄専用の口座を用意し、給料日の翌日など決まったタイミングで自動振替されるように設定しておく方法が続けやすい。勤務先によっては、給与から天引きで積み立てる財形貯蓄制度を利用できる場合もある。「余ったら貯める」のではなく「先に取り分けてから残りで生活する」という順序を仕組み化することが、この自衛策の本質だ。

自衛策2:少額から始められる積立投資を知っておく

「投資」と聞くと身構えてしまう人も多いが、今は月々数千円から始められる積立の仕組みが整っている。NISA(少額投資非課税制度)のような、税制優遇を受けながら長期でコツコツ積み立てる制度も用意されている。

NISA制度は、口座内で得た運用益が非課税になる制度で、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みになっている。生涯にわたって非課税で保有できる上限額が定められており、限度額の範囲内であれば、長期間にわたって非課税の恩恵を受けながら積み立てを続けられる。会社員・公務員であれば、iDeCo(individual-type Defined Contribution pension plan、個人型確定拠出年金)という、掛金が所得控除の対象になる別の制度を併用できる場合もある。ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せないという制約があるため、NISAとは性質が異なる点に注意してほしい。

ここで大事なのは、一括で大きな金額を投じることではなく、毎月決まった額を機械的に積み立てていく方法だ。相場の上下に一喜一憂せず、購入時期を分散させることで平均取得価格をならしていく、いわゆる「ドルコスト平均法」の考え方が基本になる。

ただし、具体的にどの制度・どの商品を選ぶかは、それぞれの家計状況やリスク許容度によって変わる。この記事では制度の存在を知ってもらうことを目的としており、個別の商品を勧めるものではない。始める際は、金融機関の相談窓口や信頼できる情報源で詳細を確認してほしい。

もう一つ意識しておきたいのが「分散」の考え方だ。一つの銘柄・一つの資産クラスに集中させるのではなく、国内外の株式や債券など値動きの異なる資産に分けて保有することで、どれか一つが値下がりしたときの影響を和らげやすくなる。投資信託の中には、この分散をあらかじめ組み込んだ商品も多く、個別の株式を自分で選定する自信がない場合は、そうした商品から検討し始める人が多い。いずれにしても、リスクをゼロにする方法ではなく、リスクを管理しながら長期でならしていくという発想が基本になる。

自衛策3:資格取得を「昇給」ではなく「市場価値」として捉え直す

リハビリ職の資格取得は、今の職場での昇給には直結しないことが多い。しかし、市場価値という視点で見ると話が変わる。

認定理学療法士や専門分野の認定資格、あるいは簿記や語学といった異業種でも通用する資格は、今の職場での給料には反映されなくても、転職市場では評価材料になる。「今の職場で評価されるかどうか」だけでなく、「この経験・資格は、他の職場でも通用するか」という視点を持っておくと、いざ転職を考えたときに選択肢が広がる。

資格そのものだけでなく、資格取得の過程で身につけた学習習慣そのものも、実は市場価値の一部だ。「決まった時間に机に向かい、計画的に学習を進める力がある」という事実は、職務経歴書の自己PRでも使える材料になる。今の職場での評価に直結しなくても、こうした経験を意識的に言語化し、蓄積しておくことが、将来の選択肢を広げることにつながる。

また、異業種転職を視野に入れているなら、医療系の資格だけでなく、簿記、TOEIC、ITパスポートといった異業種でも直接評価されやすい資格を検討するのも一つの手だ。臨床の学習と並行して進めるのは負担が大きいが、「今の職場では評価されにくくても、次の職場では武器になる」という視点を持って学習テーマを選ぶだけで、同じ勉強時間の使い方でも将来への効き方が変わってくる。

自衛策4:支出の中で「聖域」を作らない

収入を増やすことがすぐには難しくても、支出を見直す余地は誰にでもある。特に、契約したまま使っていないサブスクリプション、なんとなく続けている固定費は、一度洗い出す価値がある。

「削れるところがない」と思い込んでいる支出ほど、実は見直せることが多い。家計簿アプリなどを使って、まず現状を可視化することから始めるとよい。

見直しの対象になりやすいのは、通信費、保険料、サブスクリプション型のサービス利用料など、毎月自動的に引き落とされる固定費だ。一つひとつの金額は小さくても、積み重なると年間で見たときに無視できない金額になっていることが多い。まずは直近数か月分の明細を洗い出し、「今も本当に使っているか」を一つずつ確認するところから始めてほしい。一度見直せば、その後は自動的に効果が続くという点も、固定費の見直しが優先度の高い自衛策とされる理由だ。

特に保険は、独身時代に加入した保障内容のまま見直していない、というケースが多い。ライフステージが変わっているのに保障内容が当時のままになっていないか、一度確認する価値がある。ただし保険の見直しは家族構成やリスクの考え方によって最適解が変わるため、この記事では「見直す価値がある」という視点の提示にとどめ、具体的な保険商品の是非には触れない。判断に迷う場合は、特定の商品を売ることが目的ではない中立的な相談窓口を選ぶことをおすすめする。

自衛策5:副業が可能かどうかを確認する

勤務先の就業規則によっては、副業が認められている場合もある。訪問リハビリのスポット案件、オンラインでの運動指導、専門知識を活かしたライティングなど、リハビリ職の知識を活かせる副業の形はいくつかある。

ただし、公務員や一部の医療機関では副業が禁止されていることも多い。まずは自分の勤務先の就業規則を確認するところから始めてほしい。副業が認められている場合でも、本業に支障が出ない範囲での実施が前提になる点、確定申告が必要になるケースがある点は、事前に理解しておく必要がある。

具体的な副業の形としては、大きく2つの方向性がある。一つは、リハビリの専門知識をそのまま活かす方向で、休日の自費リハビリ施術、オンラインでの運動指導、地域の健康教室での講師業などが挙げられる。もう一つは、専門知識から少し離れて、文章作成が得意ならライティング、人に教えることが得意ならオンライン家庭教師など、臨床で培った対人対応力や説明力を別の形で活かす方向だ。どちらが向いているかは、自分がどちらの作業をストレスなく続けられるかで判断するとよい。

副業で得た所得は、給与所得とは別に確定申告が必要になる場合がある。副業の所得区分(雑所得か事業所得か)によって計算方法や必要書類が変わるため、始める前に国税庁の案内や税理士など、信頼できる情報源で確認しておくことをおすすめする。「知らなかった」では済まされない部分なので、収入を得始めてから慌てて調べるのではなく、始める前の段階で一度確認しておくと安心だ。

副業を始める際は、いきなり大きな収入を狙うのではなく、まずは小さく試してみて、無理なく継続できる形を探ることをおすすめする。本業に影響が出るほど時間や体力を使ってしまっては、本末転倒になってしまう。

「うまい儲け話」には近づかない

給料が上がらないという焦りは、残念ながら悪意のある勧誘の標的にもなりやすい。「必ず儲かる」「元本保証で高利回り」といった話を、職場の先輩や知人経由で持ちかけられるケースは、リハビリ職に限らず後を絶たない。

資産形成の基本は、地道な積み立てと分散であり、確実に・短期間で大きく増やす方法は存在しないと考えておいたほうが安全だ。「元本保証なのに高利回り」という組み合わせ自体が、金融商品の仕組み上ほぼあり得ない話だと知っておくだけでも、怪しい勧誘への耐性は大きく変わる。判断に迷う話を持ちかけられたときは、その場で即決せず、金融庁や消費生活センターなど公的な窓口に相談する習慣を持っておくと安心だ。

5つの自衛策の比較

それぞれの自衛策にかかる労力と、効果が出るまでの期間感を整理すると、次のようになる。

自衛策 必要な労力 効果が出るまでの期間
先取り貯蓄 低(仕組み化すれば自動) 短期(仕組み化した翌月から)
積立投資 低〜中(制度理解が必要) 長期(数年単位で効果を実感)
資格取得 高(学習時間の確保) 中〜長期(取得後、転職時に効く)
支出の見直し 低(一度洗い出せば継続効果) 短期(見直した翌月から)
副業 中〜高(時間・体力の確保) 短〜中期(始めた分だけ収入増)

労力が低く、すぐに効果を実感しやすい先取り貯蓄と支出の見直しから始め、余裕が出てきたら積立投資、さらに時間や体力に余力があれば資格取得や副業へと広げていく、という順番で考えると取り組みやすい。最初からすべてに手を出そうとすると挫折しやすいので、まずは1つか2つに絞って始めるくらいでちょうどいい。

5つの自衛策をどう組み合わせるか

ここまで紹介した5つの自衛策は、どれか一つだけをやればいいというものではなく、状況に応じて組み合わせるのが現実的だ。

まず着手しやすいのは、自衛策1(先取り貯蓄)と自衛策4(支出の見直し)だ。どちらも特別な知識がなくても、今日から仕組みを整えるだけで始められる。この2つで家計の土台を整えたうえで、余裕資金の範囲で自衛策2(積立投資)に取り組むという順番が、無理のない進め方になる。

自衛策3(資格取得)と自衛策5(副業)は、時間や労力の投資が必要になるぶん、今の生活リズムの中で無理なく続けられるかどうかを見極めてから着手したほうがよい。すべてを同時に始めようとせず、自分の状況に合わせて優先順位をつけることが、挫折せずに続けるコツだ。

よくある質問

Q. 貯金がほとんどない状態でも、積立投資を始めていいですか?

A. まずは生活防衛資金を優先したほうがよい。急な出費に対応できるだけの現金がない状態で投資を始めると、必要なタイミングで元本割れした状態のまま引き出さざるを得なくなるリスクがある。当面の生活費をある程度確保できてから、余裕資金の範囲で投資を検討するのが基本的な考え方だ。

Q. NISAとiDeCo、どちらを優先すべきですか?

A. 一概には言えないが、iDeCoは原則60歳まで引き出せないという制約があるため、住宅資金や教育資金など、途中で使う可能性のある資金はNISAで、老後資金として明確に位置づけられる部分はiDeCoで、というように目的に応じて使い分ける考え方が一般的だ。詳細な制度設計は変更される可能性があるため、始める前に必ず最新の公式情報を確認してほしい。

Q. 資格取得と積立投資、どちらを優先すべきですか?

A. どちらも「今すぐ収入には反映されないが、将来の選択肢を広げる」という点では共通している。資格取得は自分の学習時間への投資、積立投資はお金そのものの投資という違いがあるため、両立できる時間的・資金的な余裕があれば両方進めて構わない。時間の余裕がない時期は資格取得を優先し、まとまった時間が取りにくい時期は積立投資の仕組み化だけ済ませておく、というように、そのときの生活リズムに合わせて配分を変えるとよい。

まとめ:転職はいつでもできる。でも今日からできることもある

給料が頭打ちだと感じたとき、最も根本的な解決策は環境を変えること、つまり転職であることに変わりはない。しかし、転職のタイミングを待つ間にも、自分でできる自衛策は確かに存在する。

先取り貯蓄の仕組み化、少額からの積立投資、資格を市場価値として捉え直すこと、支出の見直し、副業の可能性の確認。どれも今日から始められることばかりだ。

昇給を待つだけの数年間を、ただ過ごすのではなく、自分の手で資産と市場価値を積み上げる期間に変えていく。転職するにしても、今の職場に残るにしても、この視点は必ず役に立つはずだ。

大きく構える必要はない。まずは先取り貯蓄の口座を一つ作る、家計簿アプリで今月の支出を可視化してみる。そのくらいの小さな一歩からで十分だ。小さな仕組みを積み重ねた数年後には、何もしなかった場合と比べて、資産の面でも市場価値の面でも、確実に違う場所に立っているはずだ。

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