理学療法士→ケアマネジャー
実務経験がそのまま受験資格になる、専門知識を活かせる転身先。
ケアマネジャーの平均年収は理学療法士とおおむね近い水準ですが、実際の年収は所属事業所の給与体系によって差が大きく、業務は身体介助中心から書類作成・多職種調整中心へと大きく変わります。
理学療法士の実務経験がそのまま介護支援専門員(ケアマネジャー)の受験資格になることは、すでにご存じの方も多いかもしれません。では、実際に転職した場合、年収や働き方はどう変わるのでしょうか。この点について、公的統計や実際にケアマネジャーとして働く知人への取材をもとに調べてみました。
なお、本記事の実務内容に関する記述は、筆者自身の実体験ではなく、調査および知人からの取材に基づくものであることをあらかじめお断りしておきます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査など公的な統計を確認すると、介護支援専門員の平均給与は、理学療法士の平均給与とおおむね近い水準にあることがわかります。ただし、これはあくまで全国平均の話であり、実際の年収は「どの事業所に所属するか」によって大きく変わってきます。
具体的には、居宅介護支援事業所の専任ケアマネジャーとして働く場合と、施設に併設された事業所でケアマネジャー業務と施設内の他業務を兼任する場合とでは、給与体系が異なることが多いようです。また、地域によって基本報酬の算定単価に差があるため、都市部と地方でも水準が変わってきます。
さらに見落とされがちなのが、資格手当の扱いです。理学療法士として働いていた際に支給されていた資格手当がなくなり、代わりにケアマネジャーとしての手当がつくケース、あるいは両方の資格を持つことで評価されるケースなど、事業所によって扱いが分かれます。
転職を検討される際は、「ケアマネジャーの平均年収」という一般的な数字だけでなく、応募先の事業所がどのような給与体系を採用しているかを、求人票や面接で具体的に確認することが欠かせません。
介護支援専門員として働く知人に話を聞いたところ、理学療法士としての臨床経験が特に活きる場面として、次のような点が挙がりました。
一つは、利用者さんの身体状況のアセスメントです。ケアプランを作成する際、利用者さんがどの程度の動作能力を持っているか、今後どのような機能低下のリスクがあるかを見立てる場面で、PTとしての臨床経験がそのまま強みになるそうです。他職種出身のケアマネジャーと比べて、身体機能面での判断に説得力を持たせやすいという話もありました。
もう一つは、リハビリ職との連携のしやすさです。ケアプランには訪問リハビリや通所リハビリのサービスを組み込むことが多く、リハビリ職出身のケアマネジャーは、現場のPT/OT/STが何を重視して評価やプログラムを組んでいるかを理解した上で連携できます。これは、他職種出身の方にはない強みとして語られていました。
一方で、戸惑いやすい点として挙がったのは、書類業務の多さと、他職種・多機関との調整業務です。ケアプランの作成、給付管理業務、サービス事業所や医療機関との連絡調整など、臨床現場とは異なる種類の事務作業が中心になります。「体を動かして患者さんと向き合う仕事」から「デスクワークと調整業務が中心の仕事」への変化に、当初は戸惑ったという声も聞かれました。
介護支援専門員実務研修受講試験は、受験資格として一定期間の実務経験が必要とされています。理学療法士としての実務経験は、この受験資格の対象に含まれるため、PT/OT/STにとっては資格取得のハードルが比較的低い部類に入ります。
試験対策として調べてみたところ、介護支援専門員試験は、介護保険制度や医療・福祉サービスに関する知識を幅広く問う内容になっています。臨床現場での経験だけではカバーしきれない、制度面の知識を新たに学ぶ必要がある点は、事前にご理解いただいたほうがよいでしょう。
もう一つ、意外に知られていないのが、試験に合格しただけでは業務に就けないという点です。合格後に実務研修を受講し、修了して初めて介護支援専門員として登録できます。この研修期間は決して短くないため、「試験に合格したらすぐ転職」というスケジュールにはなりにくいことを、計画段階で織り込んでおく必要があります。
理学療法士からケアマネジャーへの転職を検討される場合、次の点を事前に確認しておくことをおすすめします。
所属先の事業所形態。 居宅介護支援事業所の専任か、施設併設で兼任するのか。業務内容も給与体系も変わってくるため、求人票だけでなく面接で具体的に確認する必要があります。
担当件数の目安。 ケアマネジャー1人あたりが担当する利用者数は、事業所によって差があります。担当件数が多いほど業務負荷も上がるため、事前に確認しておきたい項目です。
資格取得までのスケジュール。 実務研修受講試験の受験時期、研修期間などを踏まえ、いつから実際にケアマネジャーとして働き始められるのか、逆算して計画を立てる必要があります。
働きながら取得するのか、退職してから取得するのか。 試験勉強と研修受講を、現職を続けながら並行して進めるのか、一度退職してから集中して取り組むのか。この選択によって、収入面の計画も大きく変わってきます。
理学療法士としての臨床経験は、ケアマネジャーという仕事において確かな強みになります。ただし、業務内容は臨床現場と大きく異なり、書類業務や多職種調整が中心になる点は、転職前にしっかりイメージしておく必要があります。
まずは、実際にケアマネジャーとして働くPT/OT/ST出身の方の話を聞く機会を作ったり、資格取得のための研修情報を集めたりすることから始めてみてください。「資格が取れるから」という理由だけで進めるのではなく、実際の業務内容が自分に合っているかを見極めることが、転職後の満足度を大きく左右します。
受験資格の詳しい条件や、福祉用具専門相談員との比較については理学療法士からケアマネジャーへの転職で解説しています。医療知識を活かせる他の選択肢と合わせて比較したい方は、医療系専門職の記事まとめもあわせてご覧ください。
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